大判例

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名古屋高等裁判所 昭和45年(ウ)38号 判決 1976年4月21日

申立人(債務者)

長谷川

右代理人

杉田正

外一名

被申立人(債権者)

須賀さだこと

稲熊さだ

右代理人

田中一郎

主文

名古屋地方裁判所昭和三四年(ヨ)第二三八号不動産仮処分申請事件につき、同庁が同年三月二〇日になした仮処分決定はこれを取消す。

申立費用は被申立人の負担とする。

本判決は仮りに執行することができる。

事実

申立代理人は主文第一、二項同旨の判決を求め、その理由として、

一、被申立人に対し、別紙目録記載の土地(以下「本件土地」という。)につき、主文第一項記載の仮処分申請をなしたところ、同項記載の日に左記主文の仮処分決定がなされ、その執行がなされた。

被申請人はその所有名義の別紙目録記載の不動産に対し、譲渡、質権、抵当権、賃借権の設定その他一切の処分をしてはならない。

二、被申立人は申立人を被告として、右仮処分の本案訴訟として、名古屋地方裁判所昭和三四年(ワ)第四七九号土地売買登記抹消手続請求の訴を提起したが、昭和四四年一二月一〇日、申立人所有名義の本件土地は登記名義のとおり、申立人の所有に属するもので被申立人には何らの権利もないとの理由で、請求棄却の判決(以下「本件本案判決」という。)がなされた。

三、1 被申立人は右判決を不服として控訴し、名古屋高等裁判所昭和四四年(ネ)第七七七号事件として審理中である。

2 しかし、控訴審においても右判決が取消されるおそれはないと考えられる。

四、なお、被申立人は、申立外成田貞之に対しても、右本訴と事実関係法律関係が共通の土地売買登記抹消請求訴訟(以下「別件」という。)を提起し、名古屋地方裁判所昭和三四年(ワ)第四七八号、名古屋高等裁判所同三九年(ネ)第五七〇号、最高裁判所同四二年(オ)第九八六号各事件として審理せられたが、昭和四三年二月一五日最高裁判所で上告棄却の判決言渡があり、原告敗訴の趣旨の控訴審判決が確定している。

五、よつて、被申立人の申立人に対する前記仮処分決定は、その後本件本案訴訟第一審判決およびこれと内容の共通する別件判決の確定により事情が変更したから取消されるべきである。よつて本件申立に及ぶと陳述し<た。><以下省略>

理由

当事者間に争いない申立の理由一、二、の事実によると、本件仮処分の本案訴訟において、被保全権利不存在の理由で、被申立人(仮処分債権者)敗訴の一審判決がなされたことが疏明されるし、<証拠>により疏明される右判決理由のうち、特に本件土地の鈴木三郎への売却については、被申立人も承諾して居り、その後本件土地は転々して申立人に帰属している旨の説示は、当審の自由裁量にてらしても首肯し得るところである。

旁々、本件本案訴訟と事情を共通にする(<証拠>によると、目的物件は元、一筆の土地であつたものが、被申立人名義に属する間に分割され、約二ケ月を隔てて別々に移転登記されていることが疏明される。)別件訴訟でも、被申立人の抹消登記請求を排斥する判決の確定していることは当事者間に争いがなく、<証拠>によると、右判決の理由も、現登記名義人に所有権が移転していることを肯定する点において、本件本案判決と軌を一にするものである。

成立に争いない疏乙第二号証の判決も「本件土地の譲渡については被控訴人(被申立人)も了承していたものの如くである。」と述べているので、反証とするに足らない。成立に争いない疏乙第一号証の判決は、本件土地の所有権移転についてはふれていないから、この点についての反証とはならぬものである。

そうだとすると、本件本案判決が現に控訴審で審理中であることは当事者間に争いがないが、(本件土地が申立人に帰属している以上、偽造文書による登記でも抹消請求は許されないから、)取消のおそれはないものと認められるので、本件仮処分決定につき事情の変更があつたものというべきである。

よつて申立人の本件仮処分取消申立は正当として認容すべきであり、民訴法第八九条第一九六条を適用し主文のとおり判決する。

(柏木賢吉 夏目仲次 菅本宣太郎)

目録<省略>

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